2019年6月24日月曜日

原題はシンプルに「天使」



試写で見てきた。1971年、アルゼンチンで実際に起こった事件(連続殺人、というと少し違うような気がする)を基にした作品。美しく、子供のころから女性と間違えられることもあったカルロス・ロブレード=プーチ(ロレンソ・フェレ)が、産業技術学校の仲間ラモン(チノ・ダリン)やその親と組んで盗みを働き、かつ、次々と殺害していく話。

実際のロブレードが犯した罪は殺人11件、強盗17件、強姦1件、等々と数多いのだが、映画はそれらを全部描こうとはしていない。映画内での犯罪件数はもっと少ない。むしろロブレードの人格や官能性に重点を置いているという感じ。美少年フェレと名優リカルド・ダリンの息子チノの取り結ぶ関係は、実に怪しげでスリリング。なんというか、やおい女子たちにはたまらないのではないか。

ロブレードは当初から同性愛者ではないかと報道されたとのことだが、そう断定していないところが映画の生み出す官能性の中心。宝石店に強盗に入ったさいにイヤリングを身につけ、壁の鏡をのぞき込む表情、バスタオルを腰に巻いて眠ったラモンのそのタオルをはだけ、盗んだ宝石を股間に置くシーン(女体盛りならぬ男体盛り……なのか?)などは、あくまでもふれ合うことのないふたりを描きつつ、ゾクッとさせる。逆にラモンの方がゲイの美術商に身を委ねるところが、このふたりの関係の重要なところ。


(写真はイメージ)