2018年3月4日日曜日

これも昨日のこと


東京シティ・バレエ団創立50周年記念公演『白鳥の湖』@東京文化会館

1946年、藤田嗣治が帝劇での『白鳥の湖』初演の舞台美術を手がけた。その資料を見つけて、それを手がかりに舞台美術家フジタについての博士論文を書いたのが佐野勝也。その博論は書き直しを経て佐野勝也『フジタの白鳥――画家藤田嗣治の舞台美術』(エディマン/新宿書房、2017)という本になった。佐野さんはこの本の完成を見ずに死んでしまったけれども、こうした活動を続けながらもフジタの舞台装置による「白鳥」の再演を希求していた。今回、足達悦子が佐野さんの遺志を受け継ぎ、復元、大野和士指揮、東京都交響楽団の演奏で上演と相成った。

日によってキャストが違うが、初日の昨日はいずれもベルリン国立バレエ団のプリンシパル、ヤーナ・サレンコとディス・タマズラカルがそれぞれオデット/オディールとジークフリード王子を客演。

「幻想的な」夜の湖と言えば青が思い浮かぶところを、フジタの美術はそこに緑を射し、鮮やか。ヤーナ・サレンコの羽と脚の動きの優雅さ、リズムの堂々としたタメは素晴らしかった。

『フジタの白鳥』の佐野勝也は僕の大学の先輩。外語大は通称「語劇」という専攻語による劇を作って秋の学祭で披露する伝統があるのだが(というか、学祭はもともと「語劇祭」であったわけだが)、僕も大学の最初の2年間は彼とともに劇をつくったのであった。最初の年は彼が演出、僕が舞台監督(ミュージカル『エビータ』)。僕が2年の時には僕が演出、彼はキャストの一員として(ガルシア=ロルカの『血の婚礼』)。ともかく、そんなわけで、東京文化会館大ホールの満員の人出ではあったけれども、学生時代、佐野さんに縁の先輩後輩たちとも顔を合わせたのだった。

観劇後は美女二人(要するにそこで顔を合わせた後輩だが)と牡蠣を堪能。