Damián Szifron, Relatos salvajes (アルゼンチン、スペイン、2014)
邦題はまだ秘密、試写会に呼んでいただいたのだ。
このタイトル、この公式サイトの最初のイメージ。これはどう考えてもボラーニョだろう、という予断を持って見に行ったのだ。『野生の探偵たち』Los detectives salvajes ならぬ『野生の短編たち』Relatos salvajes。
監督のシフロンはどこかで、暴力に関係した短編を書いているうちに、それらがつながった、というようなことを言っている。連作短編の趣のある長編、という意味でも『野生の探偵たち』ではないか! なんといっても暴力とその思いがけない展開、切実なはずだけど笑ってしまう内容など、……うむ、強引に取ればボラーニョのようでなくもない。
まあボラーニョのようかどうかは別として、1パステルナーク、2ネズミたち、3最強の男、4発破、5提案、6死が二人をわかつまで、という6つの短編(後に行くほど長くなるように感じた)からなっている。
飛行機の中で通路を隔てて隣同士に座ったモデル(マリーア・マルル)と音楽評論家(ダリーオ・グランディネッティ)が会話を交わし、ほどなく、モデルの最初の恋人パステルナークのことを音楽評論家が知っていると言い出す。あるコンクールの審査員をしていたときに、パステルナークの作品をけなしたのだ。すると、後ろの席の女性が、自分はそのパステルナークの小学校の先生だったと名乗りを挙げる。それを聞いて、パステルナークと同学年の教え子が、先生ではないですか、と声をかけてくる……
そんな始まりだ。なんだか面白い。でもなんだか面白いということは、なんだかおかしい。恐怖すべきことがそこにあるのだ。そしてその恐怖が現実のものになる……といった具合だ。これがオープニングの最初の短編。
音楽もところどころおかしな雰囲気を醸し出している。グスターボ・サンタオラーヤの担当。