2010年3月9日火曜日

身の毛がよだつ

昨日、ディズニーのある歌のスペイン語版で "no me interesa tener novios" (恋人つくるのなんて興味ないわ)という歌詞があるが、なぜ "tener novios" と「恋人」novio が複数形なのだ? 恋人がいるだのいないだのなら "tener novio" と単数形でいいのではないか? などという疑問に突き当たり、ネットで "tener novios" や "tener novio" がどのくらいの頻度でどのように使われているのか、検索してみた。

よせばいいのに、"La 'idol' japonesa no puede tener novio" (日本のアイドルは恋人を持てない)という例文を見いだし、そのサイトへ行ってしまった。

写真が載っていた。歩道に突っ伏す女性の写真だった。「即死だった」との文字が刷り込まれていた。1986年に所属するレコード会社の屋上から飛び降り自殺したあるアイドルが、飛び降りた直後の写真だ。血が帯のようになってある一方向に流れていて、別の方向にはよく判別できない何かが散乱していた。

どういうわけか、ぼくはしばらくその写真を、うまく認識できないままにぼんやりと眺めていたのだった。それがその写真だとわかってしまった後には、呪縛に囚われたようにそこから目が離せなくなった。

記憶がよみがえってくる。そのアイドル歌手を、ある友人が愛でていた。無機質なところがいい、と。そういえば彼女が飛び降りた写真というのがどこかの写真誌に掲載されて物議を醸したんじゃなかっただろうか。特に興味があったわけではないので、噂としてだけだけど、そんなことを聞いたような気がする。かなり年上の妻子ある俳優に横恋慕したのが原因ではないかとささやかれたんだったっけか。

そんなことを思い出しながらも、写真から目が離せないでいた。我に返ったときには肋骨のあたりに圧迫感を感じた。肋間神経痛だ。その晩はもう何もできなくなった。寝た。

睡眠は体の不調をリセットしてくれる。目覚めたときには元気になっていた。助かった。夢の中でぼくは、仕事に追い立てられているのに、断り切れない飲み会に誘われ、立ち往生していた。このジレンマからも解放されたから、二重の意味で助かった。忙しいからこんな夢を見るんだな、きっと。睡眠は夢で記憶を整理する。

今日は雨なのか雪なのか、みぞれなのか、なんだか冷たそうな液体が降っていた。やがて雪に変わるものだ。寒い。神経病みのぼくにはつらい?

だが幸い、ぼくは寒くなると神経が痛むというタイプの神経病みではない。別に体調に不具合はない。

4月に参加するあるイベントの予告で、ぼくの名前が間違えて書かれているのを見つけた。よくある間違いだ。よくあるからこそ許し難い間違いだ。何かが体の中で、体の芯のあたりで、震えた。

また肋骨が圧迫された。

寒さのせいではない。たぶん。