2025年5月3日土曜日

映画週間

 ゴールデンウィークという語が映画産業の作った語であることは良く知られているところ。今でもこの連休には観たい映画が多くて困る。

4月29日には:

ウカマウの映画祭@K’s Cinemaでホルヘ・サンヒネス『女性ゲリラ、フアナの闘い――ボリビア独立秘史』メルセデス・ピティほか、2016

 独立後のフアナ・アスルドゥイの家にボリーバルとアントニオ・ホセ・デ・スクレ、ホセ・ミゲル・ランサがやって来て、フアナの半生を語らせるという内容。夫のマヌエル・パディージャとともに独立戦争に参加、中佐にまでなる。夫は裏切られ、殺される。子供4人はマラリアなどで死ぬ。最後にひとりだけ残る。独立後も地方の有力者は単に新しい体制に従順にしているだけで、先住民問題などは解決していないことを別れ際のボリーバルらに強調する。


 ウカマウもこうした歴史物語を作るのだ。ロングショットや長回しの多用というウカマウの自家薬籠中のものとした手法で、見飽きない絵作りをしている。


 ちなみに、このフアナ・アスルドゥィのことをカルペンティエールは前置詞つきで、フアナ・・アスルドゥィと表記しているものだから、僕もついそう発音したくなる。


今日、53日は:


ラウラ・シタレラ『オステンデ』ラウラ・パレーデス他、アルゼンチン、2011


 先日ここで報告したように、『トレンケ・ラウケン』がひどく面白かったので、その作品の公開を機に展開されているラウラ・シタレラ作品特集で。今日は渋谷のユーロスペースで観た。


 ラジオのクイズ番組でオステンデの町への旅行が当たったラウラが、そのホテルで出会った中年男性ひとりと若い女性ふたりの関係に謎を感じる。週末を利用して合流した恋人フランシスコと合流するために部屋、というか棟を替えたラウラだが、その3人組も新たな棟に姿を現し、謎は深まる。その3人の関係を色々と推理したラウラはフランシスコに話すのだが、どれも決定打に欠ける。


 時間切れでふたりはブエノスアイレスに戻っていく。その後の3人の様子をカメラはロングショットで捉える。そこでショッキングなラストが訪れる。


 そこからエンドクレジット。そしてクレジットが終わっても暮れ行く海岸が映される。潮騒が鳴り響く。最後に暗くなって何も見えなくなり、映画は終わる。


 アルゼンチンだからというわけではないが、おのれの推理におぼれる刑事を描いたボルヘスの「死とコンパス」を思い出す。あるいはハビエル・マリーアスの『女が眠る時』。


 謎の3人の関係は最後まで明らかにされない。ただショッキングな最後が示されるだけ。被写界深度を利用したボケを多用し、またラウラの窃視が電話や第3者の介入によって切断されることによって、謎の3人の行動の肝心なところが見えない。それが謎を増し、観客もおのれの推理におぼれていくことになる。



写真は先日、若い友人たちと行った八丁堀のビストロ。美味であった。