昨年末、ふと思い出したのだった。カルペンティエールだ、と。
2002年、法政大学から研究休暇をもらい、カラカスに行ったのだった。カルペンティエールのカラカスでの活動の研究に。実際にはクーデタがあったり僕が体調を崩したりしてはかどらず、そのときの成果は1本だけ論文に書いているが、それ以上のことは発表していない。そうこうしているうちに、僕が現地で得たものは Tristán e Isalda en Tierra Firme (1949) という私家版の本のコピーをのぞけば、その後の研究など考えると、あまり学術的価値はなくなってしまった。
あるところからカルペンティエールについて書かないかと誘われ、どうにか学術的な本をと考えていたのだが、そんなわけで、あまりはかどらなかった。
が、発想を転換して、一種のナラティヴ・エッセイというか、むしろ旅行記というか、あるいはまたオートエスノグラフィのようなものとして書いてみようかという気になった。
で、大学に置いてあるいくつかの関連の資料を取ってきた。そのひとつが、自身のノート。この年は自由記述欄のたっぷりあるスケジュール帳(しかも4月始まり)を持って行ったのだった。これが案外、役に立つ。そしてそこに、こんなのが入っていた。
当時の写真だ。当時は既にデジタル・カメラを使っていたので、わざわざプリントアウトしたやつだ。まだ38歳くらい。39になる前の僕は、2年前に病気をして体重を落としていたこともあって、ずいぶんと若く見える。
カルペンティエールの本などよりも前に、目の前に差し迫った原稿の締め切りがあるのに、すっかり意気消沈してしまった。