2014年3月3日月曜日

7年ばかり前の話

ご恵贈いただいた。マシャード・ジ・アシス『ドン・カズムッホ』武田千香訳(光文社古典新訳文庫)

武田訳によるマシャード第2弾。前回の『ブラス・クーバスの死後の回想』は原稿を渡してから本になるまで5年以上かかっているはずだが、第2弾はあっという間だった。1度道が開くと後はすいすい、ということか? 僕のペレス=ガルドスは渡したっきり、5年ばかりも音沙汰なしだけれども。

今日、いただいたのだ。ある大学の出す『○○大学評論』という雑誌に原稿を送付したと思ったら、研究室にこれが届いていた。で、別のある大学の刊行物も届いていた。

『中央評論』No. 286(65巻4号)

焦点が合っているので読めると思うが、ここに『アマディス・デ・ガウラ』①の文字が見える。故・福井千春さんが遺した訳稿の連載が始まったのだ! 

ガルシ・ロドリゲス・デ・モンタルボが(最終巻を)書いた騎士道物語で、最初にして最大のヒット作だ。『ドン・キホーテ』の中でも最も言及されている傑作中の傑作だ。

白状すると、これをちゃんと通しで読んだことはないのだが、だからこそ、これの翻訳は出されるべきだとずっと思っていて、そういえば、たまたま上下に重なっているので話を繋げると、武田さんが光文社の編集の方に『ブラス・クーバス』の最初の原稿を渡したころ、僕は自分自身の翻訳したい作品を提案すると同時に、福井千春さんが『アマディス』を準備しているというから、何が何でもこれは出していただきたい、とお話したことがあったのだった。直後にご本人にお目にかかったときにその話をしたら、いや、あれはまだまだだから……とおっしゃっていた。それもあって話はその後進展していなかったと思う。

福井さんはどこまで訳されたのだろう。これを受け継いで『アマディス』の全訳を完成させてくれる人はいるだろうか? 『ドン・キホーテ』は牛島訳以後もいくつかの訳が進み、まだ2つほどのバージョンが準備中という。これはこれで言祝ぐべきことだけれども、その版の1つくらいは、代わりに『アマディス』に回してもいいのじゃないか、とも思うのだ。


連載第一回は渡邊浩司さんによる解説、経緯説明と、「物語のはじまり」のパート。ガウラ(ゴール)地方、小ブリテンの2人の王が出会い、ひとりが世にも美しい姫に恋をする話。わくわくの始まりだ。