ブログを更新することをすっかり怠っていた。
斉加尚代『教育と愛国』(2022)
評判の映画だけあって平日の昼間だというのに満席であった(もっともヒューマントラストシネマ有楽町のスクリーン2、つまり100席ばかりだろうか? 小さな場所での上映なのだが)。
TBS系のMBSのドキュメンタリーのディレクター斉加が、2017年に製作してギャラクシー賞を受賞した同名の番組に、最近の関連の動向を加えて映画用に再編纂したドキュメンタリー。道徳の教科化、その教科書の奇妙におかしい(逆に薄ら寒い)内容から始まり、政権が教育に、そして最近ではその基礎たる学問に介入を可能にしていく過程を、いくつかの出来事の当事者にインタビューしながら記録したもの。
第一次安倍晋三政権下で教育基本法が改正され、閣議決定等の政府見解を教科書に強引に記入させることが可能になり、そしてそれが実際に実行された事例はただ背筋を凍らせる(近年、なんでもかんでも閣議決定したがるのはそうした目論見があるのだろう)。一方で、現役の教師たちが作った「学び舎」の教科書を採用した中学に対し、数多く寄せられた苦情の葉書(文面の日本語が怪しい。「御校が採用いたしました」など)に実名を出していたひとり籠池康徳から、それが日本会議からの指示を受けての行為だったとの証言を引き出した箇所などは貴重なのではあるまいか。
ネトウヨ的言説に囚われているらしい人々と話すのが苦痛でいくつかの人間関係を断っているほど僕は直情的で冷静さを欠く人間なのだが、そんな人間としては、よくぞ最後まで見続けられたと我ながら思うのである。ミキ・デザキの『主戦場』などと合わせて観ると、「ペラッペラ」な「安っぽい愛国心」(パンフレットの白井聡の用語)がより明確に浮き彫りにされるというもの。
ちなみに、『主戦場』についても何か書いたと思ったのだが、ただ観たことを報告しただけであった(リンク)。きっとこれも「ペラッペラ」な連中にイライラしながら観たからちゃんと書く余裕がなかったのだろうな。そういえば最近、この映画は再上映されていたのだった。
落ち着いてお茶でも飲もう(といってもこの珈琲店に入ったことはまだない)。