評判の藤井道人監督『新聞記者』を観てきた@角川シネマ有楽町。
シム・ウンギョンという韓国人女優が主人公なのは、日本の女優たちに軒並み断られたからだと、もうひとりの主役松坂桃李が言っていた。断るほどのヤバい内容でもないと思うのだが。
あるいは、脇を固めていた西田尚美、本田翼あたりが、主役はさすがに、……だから脇に回して、などと譲歩(?)したのでは、と勘ぐったりしながら観ていたのだ。ふたりとも原案の著者・望月依塑子に似て、そしてシム・ウンギョンにも似てショートカットが印象的ではないか!
そんな現実のモデルに重ね合わせたくなるのは、前半、実際の事件をモデルにするスキャンダルが次々と話題にのぼるからだ。けれども、映画の後半はあくまでも現実とは異なる(少なくともまだ明るみに出ていない)スキャンダルを解明するフィクション。この転換は賛否両論だろうなと思う。
後半、……というよりもクライマックスは、ふたりの主人公がスキャンダルを解明する過程ではなく、彼らの心理が追い詰められる過程の描写になる。だからスローモーションなども使われるのだが、個人的にはその使用は今ひとつ気に入らなかった。(でも、そういえば、女性記者の心理を追い詰めていくためにはあの設定が必要で、つまりは日本人女優に断られたからというよりは、むしろそれを狙ってのキャスティングだという考え方もできるかもしれない。本当のところは、知らない)
映画の最大の見所は内閣調査室を描いたことだろう。実際には関係者以外は立ち入ったはずのない部屋、ABの独裁を推進するために世論のコントロールすらしている秘密の部屋。これはもう想像力を駆使して描くしかない舞台なのだが、その室長を演じる田中哲司の悪役ぶりが光っていて、不気味。映画の最大の意図はその一点で達成されていると思う。
SONYデジタルペーパーのカバーを外してみた。