6月10日(水) フランス文学の野崎歓さんがコーディネーターを務めるリレー講義「翻訳の創造性」で3回、授業を担当せねばならない。その第1回の授業が、この日だった。セルバンテス『ドン・キホーテ』がアラビア語からの翻訳との体裁をとっていることを巡り、なおかつ、そのアラビア語草稿がトレードで見つかったとされていることをめぐり、スペインと翻訳の歴史の問題について語った。
6月12日(金) NHKラジオ第2で「英語で読む村上春樹」という番組がある。今、思いついてツイッターで検索してみたら、そんなもの、日本語で読めばいいではないか、とのつぶやきがひとつふたつあった。そういうことを言う人には、ぜひ、「翻訳の創造性」、受講してもらいたいものだと思う。翻訳論は、理論の最前線にあるのだ。
さて、その「英語で読む村上春樹」には、かつて、1年目の年、テキストのための特集で参加したことがある。で、今回は、本編の放送の方に呼んでいただいて、この日、お話しした。放送日は未定だが、「TVピープル」の中で主人公=語り手がガルシア=マルケスの小説を読んでいるという一文があるので、ガボと春樹の関係などをしゃべってきたのだった。
終わってNHK勤務の友人(年少の友人。まあ、要するに教え子だ)と待ち合わせ、ささやかな打ちあげのようなことをやった。月-金で早朝の仕事をしている彼女は、1週間の仕事を終えて解放感に包まれ、ぼくは慣れない仕事を終えた解放感に包まれ、晴れやかなふたりであった。
もう社会人生活も5年目だか6年目だかになるその方は輝いて見えた。だいぶ立派に見えた。体もひとまわり大きくなったようだった。ねえ、君、ひょっとして背が伸びたのか? と訊ねてみたら、ヒールが高いのだとの答え。
……なるほど。
6月13日(土) ボルヘス会記念大会というやつでボルヘス未亡人マリア・コダマの話を聴きに行った。詩人の新井高子さんによる詩の朗読およびブエノスアイレスでの世界詩大会への参加報告、高橋睦郎さんの話に続いて、「ボルヘスと俳句」という話をしてくださった。ボルヘスが残した17句の俳句を日本の俳句と比較しながら分析したお話し。
マリア・コダマさんの講演会は東大でもやります。18日(木)東大本郷 法文1号館214教室。タイトルは「ボルヘスの記憶」。
コダマさんと個人的に話している時間はなく、その日はその後、大学時代の友人たちとの集まりに出かけて行った。